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上田まり / coronet CD

¥2,000

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上田まりの00年に出た第三作目。
この後シングルが1枚出ていますが、アルバムとしてはこれ以降リリースが無いので最終章。

今作からPro Toolsの文言などが見受けられるところを見ると、この時代からDTMが登場してくることがわかるように、前作とはまるで違った音響空間にて鳴らされる上田まりの世界線が聴ける作品。
この後、日本でも音響派やエレクトロニカ勢が旋風を巻き起こすことを考えるとリアルタイムにて先端の技術が使われていたことがわかるわけで。Radioheadのkid Aとリリース同年というのもまた色々と見えてきます。
椎名林檎の初カバー作品でもある、DTM環境にて作り上げたことがわかる実験作、"唄ひ手冥利〜其ノ壱〜"にてプログラミング、編曲などを担当していた、森俊之と井上うにが全面バックアップしている影響が大きく、Pro Toolsを駆使したPOPS世界は楽器を演奏する概念よりも細部を強調した、まさに"音響"を個人が自由自在に操る、スタジオを楽器とした初期の音が聴こえてきます。
今作の3年後03年に作られた椎名林檎の名作、"加爾基 精液 栗ノ花"のプロト作品でもある、02年制作の椎名式ダークサイドカバー集が裏であれば、今作は上田式サニーサイドな表的プロトタイプとして、このようなPOPフィールドにて表裏実験が繰り広げられたと考えるとなんともゾワゾワします。

処女作から参加の亀田誠治陣営が本格的に入り込んできたことによって、処女作から舵を切ってきたプロデューサー、江口信夫色は薄くなっており、より混沌としたエレクトロニカ的世界を構築しているところが最高。

DTMの導入はここ日本の音楽環境において意外に世界的にみてもかなり早いわけであって、ダンスミュージックの系譜でない方向からそれは推し進められたように、フィッシュマンズの空中キャンプからの世田谷三部作ではPro Toolsを使用していたことは有名な話であり、これが96年の話しであって、アメリカの音響派バンドの代表格、トータスがPro Toolsを楽器として鳴らした"TNT"は98年作なので、それよりもっと早い段階から、日本のポップフィールドではPro Toolsでの創作が行われていた事実は忘れてはならないと感じます。

森俊之はブラックミュージックが持っていた魅力を完全にわかっていた音楽家であって、あちら側の90年代ヒップホップマナーに忠実なエンジニアでいて、SP-1200の使い手であることは有名ですが、坂本龍一のスウィートリベンジでのリミックスや、その後のSmoochyでの制作において大きな変化があったに違いないとみているのも、椎名林檎のカバー集の"君を愛す"での仕事などを聴いていると、ヒップホップという小さな枠組みを超え、教授サイドの音作りへと移行していることは明確だと感じます。

本アルバムの中でも重要なのが、亀田誠治が編曲を行う、待ちわびた休日(reprise)で、この手法は後の00年代のJ-POPSと言って良いスタイルが00年初頭で完成していたことがわかる歴史的資料。
ロック要素をうまく利用して(旧来の形をとりながら)テクノやエレクトロニカサウンドを違和感無く鳴らされる楽曲は後のJ-POPSのロック勢の音となっていくわけです。

これまで上田まりサウンドの基盤となっていたシティーポップスにエレクトロニカのような音響世界が入り混じり、なんとも浜崎あゆみ調のボーカルスタイルが少し入ってくるのも気になるところで、明らかに1stと比べるとビジュアル面に関しても大きく変貌しており、癒し系シティー派だったところが三年にて"戦う大人の女性"を想起させるビジュアルとなっているのも、この00年代を象徴する光景だと思えます。

なぜここから活動が休止しているのかはなんとも計り知れないわけなのですが、上田まり3部作は日本のPOPS史の中においても、激動の過渡期的3年のなかにてリリースされていたことがなんとも裏の聴きどころだと感じます。

次なる革新的な音をどう産業に乗せ、スタイルを作ろうかと真剣に音楽業界全体が考えた年代のように思えるわけです。

本当にこれから自分たちで作り上げて行かなければならなくなった前夜から、そこからの始まりの道のりは音楽業界全体が何か新しいPOPSの領域へと向かう、音の試行錯誤が聴けるところがなんとも大きな狂いゆく歯車の音とともに選ばれてしまった才気あるシンガーソングライターは波に揉まれながらも、ひとりの音楽家として大きな体験をしたはずで、それは椎名林檎でもあり、上田まりでもある、そして浜崎あゆみであり、ソングライティングを支えた音楽家たちでもあるのです。

CD盤面 M-:Mint Minus 美品
ジャケット EX:Excellent 経年劣化があるも全く問題のない状態・良品

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